はじめに
ジャストインタイム=日本のかんばん方式と考えてください!よって、この記事では、ジャストインタイムと言わず、日本語でかんばん方式と表現して、話を進めます。
この記事の目的
この記事は、IATF16949の『8.5.1.7』生産計画でに規格要求事項を読んで、
- ジャストインタイムと言う言葉が分からない人。
- 今後どうやって社内に導入すべきか?困っている人。
- 社内でやっているけど、よく理解できていない人。
そんな方々のヒントになればと思い書いてみました。
かんばんを利用するメリット
「かんばん」方式のメリットは、「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」のツールです。したがって、「ムリ、ムダ、ムラ」のない製造・生産が、実現する事を目的としています。
但し、「かんばん」を導入したからといって、在庫が即削減され、原価も低減され様な魔法のツールではございませんので、誤解しない様に。
「かんばん」内容は、生産・運搬の情報
「かんばん」の情報は、生産の為の情報が、記載されてます。
具体的内容は、以下の情報に成ります。
- 何を(品番)
- いつ(日時)
- どこに(生産ラインの場所)
- どれだけ(生産数量)
- どういう順序で生産
- どういう順序で運搬
上記の情報は、下記の2種類のかんばんへインプットされます。
- 生産指示情報は、「仕掛けかんばん」
- 引き取り指示の情報は、「引取りかんばん」
この様に覚えましょう。種類が多いので、成れないと分からなくなりますね。
「かんばん」は管理の見える化になる
「かんばん」は、部品箱や通函に添付し、一緒に移動されます。工場の一角に、かんばんを保管する管理ボードで見える化されているので、「かんばん」の増減具合の動きを見ることで、遅れ進みが見えてきます。
<ポイント>
- 「かんばん」が溜まってる:作業遅れの発生、ライン停止等の発生
- 「かんばん」が減っている:製品が売れている(回転している)
生産ラインの作業者は、この「かんばん」情報にもとづき、段取り人員が、引取ってきた数量分の材料・部品や半製品を使って、生産します。
<ポイント>
- 「かんばん」は無くなっても勝手に作るのはNG。
- 「かんばん」が無ければ、作業者の手待ちで、異常を検知をしらせる。
このように「かんばん」は、以下のポイントを『見える化』する為の管理ツールとなります。
ISOやIATFでも生産・工程管理の見える化は、強く求められていますね。ISO8.5シリーズの大きくかかわる部分です。
- 自工程の能力
- 在庫状況
- 人員配置
- 生産の遅れ
- 進みの把握
- 後工程の作業進捗
- 緊急度の把握等
「かんばん」は改善につながるツールに成る
「かんばん」は、改善活動の為のツールでもあります。上記の『見える化』で紹介したポイントの問題点が見えてきます。「かんばん」で、モノの動きが見えます。
モノの動きを一緒に合わせ、「かんばん」を抜き挿し、在庫を極限まで最低限の在庫に抑え、問題が見えやすいようにします。
在庫に余裕がなくなれば、工場は欠品、納入遅延を恐れ、様々な改善に着手するでしょう。ただ、「かんばん」を増やしては、何の意味も有りません。
かんばんの種類と機能
簡単に、看板の種類を紹介します。看板の種類は、多種多様に有ります。ややこしいですが、一つ一つの役割が有ります。
種類は、①「生産指示かんばん」②「引き取りかんばん」③「特殊かんばん」等があります。下記に各種説明します。
①生産指示(仕掛け)かんばん
工程内の生産を指示するための『かんばん』です。
「工程内かんばん」と「信号かんばん」があります。
- 「工程内かんばん」:工程内の『仕掛け』に使うかんばんの事。工程に、『材料・部品、半製品等』を『引き取られた量』を『引き取られた分(マイナス分)』を後補充生産する為に、使う『かんばん』に成ります。
- 「信号かんばん」:生産量の決まったLOT生産工程の『仕掛け』に使うかんばんの事。一定量になった段階で、かんばんが、外される。その後、ロット生産指示に切り替わる。かんばんを管理する、生産管理部門は、『在庫が無くなるタイミング』と『生産完了するリードタイム』を観察比較しながら、『かんばん』の『仕掛け』を行います。また。『信号かんばん』は、形状が、三角形をしているので別名「三角かんばん」と呼称されます。
②引き取りかんばん
「引き取りかんばん」は、工場の段取り人員へ、運搬を指示するためのかんばんです。種類は2つ、「外注部品引き取りかんばん」と「工程間引き取りかんばん」があります。
- 「外注部品引き取りかんばん」:外注先(社内外注、サプライヤ等)が、前工程とし、かんばんが外れた分を外注先から、納入する判断に使うかんばんの事。
- 「工程間引き取りかんばん」:自社工場内の後工程が、前工程から『必要なものを必要な時に必要な量だけ』、引き取るために使うかんばんの事。
③特殊かんばん
「特殊かんばん」には、以下の3種類あります。
- 「臨時かんばん」
- 「先行かんばん」
- 「プールかんばん」
名前の如く、特殊な状態に有る場合に使用します。工程間に昼夜勤の差がある場合や合や事前に計画生産のストックする場合等、通常の生産と異なる場合に利用します。よって、その仕事が終われば、特殊かんばんは回収されます。
かんばんと平準化の重要な関係
かんばん運用は、平準化が、必要不可欠な重要ポイントとなります。
平準化とは
工場内には、複数の生産ラインが存在しますね。各生産ラインを単純に量だけで区分するのは、平準化に成りません。品番毎に、工法やタクトタイムが、異なります。
よって、全ての工程毎の「量』の平均化をする為には、最終組立てラインの「量」を平均化するだけでは不十分です。「製品種類」についても、各生産ラインの平均化しなければなりません。
つまり、製品を●●●▲▲▲◆◆◆と生産せず、●▲◆●▲◆●▲◆「製品種類」も平均化します。こうする事により、在庫を無くし、生産能力も余裕が生まれるでしょう。平準化が悪ければ、設備、人員、在庫を注文量のピーク時に設定準備する傾向に成り、原価が高くなる恐れがあります。
ただ、実際生産する製品で、段取り等で時間や変化点を良しとしない場合は、必ずしも良いとも言えません。ケースバイケースで考慮すべきでしょう。
負荷の平準化
製品の需要は変化します。顧客からのフォーキャスト受注量にもバラツキが生じます。
そのバラツキの波をその波の形で生産手配すれば、生産能力や人員に過不足が発生し、設備負荷のバランス、作業員の手待ち、設備能力不足や人手不足に陥る恐れがあります。そこで、日々の需要のバラツキの波を月単位、週単位で分析し、平準化します。これが負荷の平準化です。
能力の平準化
複数の工程を通過し、製品が生産される場合。各工程毎の能力は、それぞれの工程の生産できる能力は異なる事が、一般的ですね。
例えば、
- Aライン工程の能力が200個/日
- Bライン工程の能力が300個/日
- Cライン工程の能力が160個/日
- Dライン工程の能力が100個/日
と上記に仮定します。
A~Dのライン工程で、同一品番の部品を生産して流すとしましょう。最も生産能力が低いDライン工程が、制約条件となり100個/日が限界です。対して、Bライン工程の能力が3倍以上も有ります。結果、Bライン工程の半製品は、在庫に成ります。Cライン工程の前で、生産が、停滞してしまいます。
このような時は、工程の能力を上げ、4つの工程能力のバランスの均一化を図っていきます。
特に、CとDライン工程の生産ラインを強化するなり、増やすなど、Bライン工程と同じ能力にすればよいのです。これが能力の平準化です。
4.かんばんの実務運用の流れ
「生産指示(仕掛け)かんばん」・「引き取りかんばん」は、工程内やサプライヤー間を循環します。
かんばんのまわし方
「引き取りかんばん」の場合
①製品が出荷⇒「仕掛けかんばん」が外れます。
②外れた「かんばん」⇒かんばんポストに入る。
③かんばんポストの「かんばん」⇒かんばん置き場に移動。
④かんばん置き場の「かんばん」⇒トラックに搭載移動。
⑤トラック搭載の「かんばん」⇒サプライヤーに到着。
⑥トラックは、「引取りかんばん」分の量をサプライヤーから製品を積載。
⑦トラックは、製品を指定された倉庫(ストア)へ納品。
「生産指示(仕掛け)かんばん」の場合
①「引き取りかんばん」により、「完成製品」出荷指示が出る。
②引き取り情報から、出荷倉庫より「完成製品」を出荷。
③倉庫(ストア)から引き取られた分(=出荷分)だけ、「仕掛けかんばん」を「引き取りかんばん」に換えて外します。
④「仕掛けかんばん」が外れた量だけ、「後工程」が、「前工程」の倉庫(ストア)から、製品を引き取ります。
⑤倉庫(ストア)より、引き取られた分だけ、「仕掛けかんばん」を外します。
⑥同じく、「後工程」が、「前工程」の倉庫(ストア)から、製品を引取る。
⑦外れた「仕掛けかんばん」をかんばんポストに入れます。
平準化仕掛けポスト
かんばん置き場には、平準化仕掛けポストを設置します。ポストは、ボード状に作成し、下記の様に区分する。
- 縦軸に製品名
- 横軸に時間
仕掛ける順番と遅れ進みのチェックを可能にする。ボードは、指定席や自由席を設けて、平準化をはかります。
5.かんばん運用と原単位
「かんばん」を運用する為に、各工程間の流れを作ります。そして、流れる単位(原単位)を合わせる必要があります。
流れを整理
各製品毎に、通過する工程から出荷されるまでの一連をフローに、整理する必要が有ります。
運搬・仕掛けの原単位を合わす
各工程にて、仕掛り単位が、異なる場合、「かんばん」を入れても工程ごとに端数が生じるため管理がややこしくなります。よって、収容数量の単位を合わせ、仕掛り単位を収容数の整数倍に成る様にすると良いでしょう。
6.かんばんの前提条件と運用ルール
「かんばん」は、必ずしも万能ではありません。トヨタ方式だからと一律神業と思わない様に。自分の会社が扱う製品や生産方法により適さない場合も有ります。
「かんばん」の運用の前提条件
「かんばん」の運用を適用するには、下記の条件が必要となります。
①繰り返し生産品である事;
ある一定の決められた量を毎日生産できる安定した製品。したがって、たまにしか生産しない製品や単一製品生産には、適しません。
②平準化されていること;
平準化とは、顧客のフォーキャストである程度の受注計画が固まっており、注文の変動が少なく、毎日の生産時間が平均して生産できる事。
③工程が安定していること;
製品要求事項に適合した品質で生産が可能な工程であることが前提です。不良率が高いと不安定で適しません。
④「かんばん」は微調整利用;
顧客の需要変動が大きい特殊な製品、特注製品等には、適用できません。
⑤部品置き場(ストア)の設置;
工場の部品倉庫で無く、各行工程毎にその日に使う部品置き場を設置する。
⑥荷姿、通い箱を設定;
箱や棚車の収容数は小さくする。動かしやすく、1個流し及び運搬の単位を小さくする事に努力します。
「かんばん」の運用ルール
IATF16949は、ジャストインタイムの運用管理ルールを確立する要求がされています。ここでの要素は、そのルールを作る時のヒントに成るでしょう。
①不良品を後工程へ送らない
製品は100%良品。不良品の場合、次の工程は、部品不足に陥ります。看板の定数量管理の意味が無くなります。
②「かんばん」が外れた分の量を取りに行く
後工程は、かんばんの量だけ、前工程に取りに行く。前工程が、後工程に、後工程生産分を全部流してはNG。
③「かんばん」が外れ分の量を生産
前工程は「かんばん」が外れた量を順番に生産する。但し、生産の優先度を考慮します。
④「かんばん」の無い時
「かんばん」が無い時は、勝手に作ってはいけません。待ちましょう。
⑤「かんばん」は現物に添付
物を運ぶ鍵の様なものです。必ず通函や棚車へ添付し、常に一緒に動きます。
⑥「かんばん」は最初の1個使用時に外してポストへ入れる
生産ラインへ払い出した、通い箱の最初の1つの部品を取り出した時に、看板を外します。
⑦欠品時の「かんばん」の動き
欠品の時は、製品が完成次第、「かんばん」を後工程に届ける。異常なかんばんの振れが出た時は、ルールを決めて対応する。
⑧「かんばん」使用部署が管理する
7.かんばん枚数(枠)の管理
顧客の注文計画の中長期の見通しに合わせて、かんばんの枚数「枠」の拡大・縮小の調整が必要になります。
かんばん枚数(枠)の考え方
巷の専門書を読むと、「かんばん」は、±10%程度以内にするとあります。その範囲内であれば、「かんばん」内容や枚数を変えずに対応できます。しかし、その範囲を超える、大きな振れ幅には対応できません。
年間での需要変動が、存在する場合には、顧客からのフォーキャスト(内示情報)で、生産量が、例えば30%増加見込みがある場合、生産「枠」を30%拡大しなければなりません。生産量が減ればその逆の対応も必要です。
拡大時のと減少時のそれぞれの取るべき手段を以下に紹介します。
生産枠「拡大」時の手段
①残業による作業時間延長
②他部署他拠点からの支援の受入
③休日出勤による作業時間延長
④シフトを増やす。2勤3勤体制等。
⑤外注委託生産
⑥生産ライン増設
⑦生産ラインの単一品番の専用化
⑧タクトタイム短縮(能力UP)
⑨工程外での事前段取り化
生産枠「減少)時の手段
①普段できない教育・訓練による技量UP活動
②他の拠点や部署の応援
③有給消化による休業
④ライン統合編成の見直し
⑤タクトタイム見直し
8.かんばん総量(運用枚数)管理
「かんばん」の枚数管理は、常に「追加・間引き」を行います。「かんばん」管理をこまめに実施しましょう。
「かんばん」の運用総枚数は最小限に調整する
「かんばん」の総枚数は、自社の在庫数に直結します。「かんばん」の動きが、停滞している場合は、製品出荷の回転率が悪く、在庫となっている事に成ります。
その逆は、「かんばん」が流動しすぎ、製品の回転率がUPし、ていれば、製品回転率が上がっていて、生産が間に合わず、出荷製品や部品の欠品の可能性が有ります。
よって、生産管理部門は、「かんばん」の運用枚数の調整作業をリアルタイムに実施する必要があるのです。
「かんばん」枚数決定の計算式(トヨタ生産方式より引用)
かんばんの枚数=[{平均需要量 x( 発注間隔+. 定期引き取りかんばんリードタイム)+安. 全係数α}/収容数].
サプライチェーン改善推進リーダーの育成
トヨタのかんばん方式を説く、とある教育資料によると、「かんばん」にて、後工程引き取りする事により、各工程を連結し、連動させるサプライチェーンを実現して、OEMメーカー、1次から3次下請け全てを連携させると説かれています。
その全体を連携した、サプライチェーンにより、「必要のモノを必要なときに必要なだけつくる」ジャストインタイムを展開させる事を求めています。
ジャストインタイムを実施する事により、無駄な在庫を極限まで減らし、更に欠品をなくし、不要不急の生産のムリムダをなくし、原価低減に繋がります。
また、ジャストインタイムが、生産ラインの改善を促し、QCDM水準の高い、製造工程に成長させます。
最終的に求めるのは、『かんばん方式』によるメリットを出す事ですね。サプライチェーンの改善は、かんばんと後工程引き取りによって、工程の連結・連動をめざす、相互改善に仕上がります。
そのサプライチェーンによる、相互改善の実現の為には、キーマンに成る「サプライチェーン改善リーダーの育成」が、重要な存在に成ります。
そのリーダーは、「かんばん」と「倉庫(ストア)」による「PULL型生産管理システム※」の構築が、出来る能力を持たなければなりません。よって、人材育成も重要になります。
※言葉の説明
「PULL(プル)型生産管理」とは、顧客の注文前に生産するか、注文後に作るかで「見込み生産」と「受注生産」に分類されます。「受注生産」は、お客様の引き(プル)に従って生産します。よって、「受注生産」=「PULL(プル)」に成ります。
おススメの書籍
今回紹介した、一連のかんばん方式を含めた生産管理の詳しい話が書かれたおススメの本を紹介します。『全図解トヨタ生産工場〔生産管理・品質管理〕のしくみ』と言う本です。2200円で販売されています。もっと勉強したい人は、読んでみてください。
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最後に
今回は、IATF16949(8.5.1.7)生産計画のジャストインタイムの言葉に対する説明でした。引き続きISO9001及びIATF16949の要求事項独自解釈の記事をご愛読いただければ幸です。